年次有給休暇を繰り返し、複数回取得しようとする社員に対して、どのような対応をすればいいのでしょうか?
時季変更権を行使し、年次有給休暇の取得を妨げてもいいのでしょうか?

原則としては、年次有給休暇は労働者が望む時季に与えなければなりません。

時季変更権を行使して年次有給休暇の取得時季を変更させる場合は、時季変更権を行使する条件を満たしているかどうかをしっかり確認する必要があります。
時季変更権は、濫用しないように注意が必要です。


◆繰り返しの請求であっても、労働者が望む時季に休暇を与えなければならない 

年次有給休暇は労働者の権利として労働基準法に定められています。
年次有給休暇を取得する日は労働者が指定することによって決まります。
たとえ繰り返しの休暇請求であっても、会社側(使用者)は指定された日に年次有給休暇を与えなければなりません。

しかしながら、労働者の指定した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営が妨げられる場合には、休暇日を変更する権利(時季変更権)が認められています。(労働基準法第39条4項)


◆時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」に行使できる

時季変更権の行使が認められているのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。
例えば社員人数が5名の会社で、4名が一斉に年次有給休暇を請求したら、残りの社員1名では業務が行えません。
こういった場合は、使用者は「時季変更権」を行使できることになります。
しかし同じ会社で、5名のうち1名が年次有給休暇を請求した場合に、忙しいから、繁忙期だから、みんな休暇をとらずに頑張っているのだから、などの理由で「時季変更権」を行使することはできません。

時季変更権は濫用せず、本人と会社側とで話し合いを持ち、本人の理解を得た上で年次有給休暇の取得時季を変更するということが理想的だといえます。