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所持している年次有給休暇の日数を全て使い切った後に、仕事を休まざるを得ないこともあります。
年次有給休暇の所持日数をオーバーしてしまった場合、その休みはどのような扱いになるのでしょうか。
基本的には無給の欠勤扱いとなります。
次回付与される年次有給休暇を前借りすることも認められてはいますが、労働者の権利ではありません。
つまり会社側が「前借りはさせない」といったら、労働者は前借りできないということになります。
また会社側は、前借りをさせる場合、次回付与するべき日数から前借りさせた日数を差し引いた日数を付与することになりますが、この日数は法定の付与日数を下回ってはいけないことになっています。

◆年次有給休暇を使いすぎてオーバーしてしまった!         
例えば10日の年次有給休暇を所持している状態で、10日全てを消化した後、さらに休暇をとらざるを得なくなった場合は、基本的には給料の発生しない「欠勤」扱いになります。
無給の「欠勤」をとると、ボーナスや昇進の査定に影響します。
自然災害などによってやむを得ず休むことになった場合は、会社によっては何らかの救済措置が設けられていることもあります。
会社の就業規則を確認してみましょう。

◆オーバーした分を、次年度分から前借りすることはできるの?     
入社日2000年4月1日 10日の年次有給休暇を所持している状態で、10日全てを消化した後、さらに休暇をとらざるを得なくなったとします。
この場合に、次回の付与日(2001年10月1日)に付与される予定の11日の年次有給休暇から前借りをして、今回の有給休暇にあてることはできるのでしょうか?

行政解釈では、年次有給休暇の前借りを行うこと自体は差し支えないとされています。
しかし、これは労働者の権利ではありません。

つまり、社員から年次有給休暇の前借りの申し出があった時、会社側には、これを受け入れなければならない義務がないのです。

「前借りをしたい」と申し出た社員に、会社側が「前借りはできない」と断ったとしても、違法ではありません。

◆年次有給休暇を前借りするときは、次年度付与日数が法定日数を下回ってはならない
先の例で、会社が前借りを認めてくれたため、次回の付与日(2001年10月1日)に付与される予定の11日の年次有給休暇から1日前借りをして休暇をとることになったとします。
では、次回の付与日2001年10月1日に実際に付与される日数は何日でしょうか?

11日から前借りをした1日を差し引いて10日の付与になるんでしょ?
・・・と考えがちですが、これは「当該年度中に労働者からの請求ある限り最低限労基法所定の年休日数を与えるべきである」とする労働基準法39条1項、2項に違反してしまうのです。


2000年4月1日入社の場合、最初の年次有給休暇付与日は2000年10月1日、付与日数は10日です。
この10日は、労働基準法で定められている最低限度の有給休暇日数(法定日数)になります。
つまり、入社半年後には最低10日の有給休暇を付与しなければならないということです。

その次の年次有給休暇の付与日は2001年10月1日、付与日数は11日です。
この11日も、労働基準法で定められている最低限度の有給休暇日数(法定日数)であり、最低11日の有給休暇を必ず付与しなければならないことになっています。
⇒年次有給休暇はいつ増えるの?

前借りをした場合も、この最低限度の付与日数は維持されなければならないのです。

つまり、1日前借りをしている状況であっても、2001年10月1日の付与日数は11日を下回ってはならないということになるのです。

◆法定日数を下回らなければ、相殺してもいい             
先の例で、仮に2001年10月1日に付与される予定の有給休暇日数が、15日だったらどうなるでしょうか?
入社日から1年半後の付与日に最低限付与しなければならない有給休暇の日数は11日でした。
15日は、この法定日数を大きく上回っています。
法定日数を下回らない場合は、前借りをした日数分を次回付与日数から差し引いても問題はありません。
つまり、前借りされた1日を15日から差し引き、14日の付与とすることができるのです。

ただし、この場合も、前借り分の日数を差し引くことで法定日数を下回ることはできません。
したがって、前借り日数が5日の場合は15日-5日=10日となりますが、法定日数を下回らないよう、付与日数は11日となるのです。